{{アヤさんに思念を飛ばすから、兄さんも手伝ってよ!}}
{ああ……解った}
僕は椅子を借りて座り込み、アヤさんに呼びかけた。
{俺が後押ししてるから、第三新東京市周辺地区にアヤがいれば、思念を飛ばせる筈だ……}
{{アヤさん……アヤさん……どこにいるんですか?無事ですか?}}
気が遠くなる程、アヤさんを呼びつづけたが、アヤさんの思念は帰って来なかった。
裏庭セカンドジェネレーション
CHAPTER 11D
第11話【
別離
】Dパート
その頃、空港のロビーを走りぬける二つの影があった。
「ローラちゃん こっちよ」
「うん ミライお姉ちゃん」
母の乗った飛行機がハイジャックされている事を知らされた時は、
さすがにローラも青ざめていたが、ミドリの母親も乗っている事を知った時に、
率先してミドリを呼びに行こうと言い出したのであった。
片道30分程度の所にあるミドリの泊まっているホテル「Occident」405号室まで二人は急いでいた。
「ローラちゃん こっちの道行けば、駅前に直行の地下鉄があるから」
「うん」
だが、二人を背後から尾行している一台の黒塗りのエレカがいた。
黒塗りのエレカの助手席に座っている黒服を着た男が携帯フォンで会話していた。
「目標はI-02を連れてどこかに移動中」
「I-02が抵抗するなら殺しても構わんが、出来るだけ生け捕りにするんだ わざわざ殺してNERVに本腰を出されては、本末転倒だからな」
「了解……」
黒服の男は携帯フォンを切り、ため息をついた。
「ほんまかなわんで なんでわしらにばっかりこんなに仕事押しつけるんじゃ……」黒服を着た男は背もたれにもたれながら呟いた。
「どこで仕掛けますか?」もう一人の黒服の男が問いかけた。
「そうやな……どこに向かっとるのかは知らんが、人通りが少ない所に入り次第やな」
「了解……ところで荷物はこのままでいいですか?」
「かまわんやろ窒息する訳じゃ無し」
「解りました」
黒塗りのエレカは距離を保ちながら二人の後をつけていった。
その頃……NERVでは
{{兄さん……アヤさんの反応が……まさか……}}
{シンイチ……いつでも反応出きる訳じゃ無い……例えば眠ってる時とかだな}
{{じゃ、薬で眠らされてまだ起きてないのかな}}
{そうかもしれん……とにかく呼びかけは続けろ}
「司令!第三新東京市の外れにて、ジェットヘリを発見しましたが、乗員は誰もいません!」通信機の前にいた女性が父さんに話しかけた。
「くっジェットヘリを捨てて移動手段を変えられたのか……引き続き調査を頼む」
「はい!」
「シンイチ エレカでミドリさんとミライ達を迎えに行かせるんだが、おまえも行くか?」父さんが呼びかけた。
{交信はどこにいたって出来るだろう……アヤを攫ったぐらいだからミライを攫わないとも限らんし、おまえも行くんだ}
{{わかったよ 兄さん}}
「はい 僕も行きます」
「もうすぐ迎えが来るから一緒に行くんだ いいな」
僕は頷いて椅子に座った。
「司令 エレカの準備出来てるわよ」指揮所の中に葛城教頭先生が入って来た。
「シンイチも一緒に行くそうなので、よろしくお願いします」
「じゃ、行きましょ シンイチ君」
「あ、はい」
僕はミサト教頭先生の後をついていった。
「これよ さ 急ぎましょ」
「あ、これタイヤが付いてますね」青いボディーの車が止まっていた。
「急ぎだったからガソリンカーなのよ これならセンターに速度調整される事も無いしね さぁ乗った乗った」
「わかりました」僕は助手席に乗り、シートベルトを装着した。
「いい?行くわよ」言うやいなや車は急発進し、地下道を爆走していた。
「このルート使えば15分で駅前に着くのよ だから我慢してねん」
僕は左手で、上にある取っ手を掴み足を踏んばっていた。
その頃・・
第三新東京駅行きSUBWAY
その標識が出ている階段をミライとローラは駆けおりていた。
「どうやら地下鉄に乗ろうとしてるみたいですね」黒塗りの車を運転している黒服の男が囁いた。
「その地下鉄は第三新東京駅直行か……やっかいだな 俺が行くからおまえは第三新東京駅で待ってろ!」
背の低い方の黒服の男は車を降りて、ミライとローラの後を追って駆け出した。
人影もまばらな駅の構内の中に二人はいた。
「5分後に発車ね」ミライは切符を買いローラに手渡した。
「時間あるから今の内にトイレ行ってこようか」
「うん……」
二人は改札を抜けホームの側にある手洗いに入っていった。
”13:12分発第三新東京市行きが一番ホームに入ります”
「あ、丁度だね」二人は手を拭きながら女子トイレを出た。
「動くな!」二人の前に黒服の男が立ちふさがり、銃を構えて言った。
「わ、私たちをどうするつもりなの?」
「おまえにはさして用は無い……おまえの姉を預かってるからな……そっちのガキの方だ……」
不意を突かれた為、鞄の中から拳銃を取り出す事も出来なかった。
{私があいつの腕を動かないようにするから、合図したら逃げましょ}
その時、不意にローラの意思が頭に流れ込んで来た。
ミライは静かに頷いた。
「ん?言う通りにするのか?」
「イヤよ!」ローラがひと睨みするや、ミライと共にホームの方に駆け出した。
「ちっ」男の銃を持つ右腕は金縛りにあったかのように動かなかった
PRRRR 13:12分発第三新東京市行きが発車します。
二人は慌てて車内に飛び込んだ。
「追って来るかも知れないから、どこかに隠れましょ」
二人は人込みの中に潜り込んでいった。
「待てっ わしも乗るんや!」少しして閉まりかけたドアに腕を突っ込んでむりやり先程の男が電車に乗り込んだ。
「くそっ どこにいったんや……」男は拳銃をしまい込んだ左胸に手を当てながら車内を歩いた。
その頃 ホテル「Occident」405号室では……
「もう一時過ぎたの……」椅子に座ったまま、うたた寝をしていたミドリは顔を上げた。
「ローラちゃん……あんな別れ方でごめんね……」ミドリは物思いに耽っていた……。
その頃 シンイチは地獄を見ていた……
「ちょっ 教頭先生っ 飛ばしすぎですよ あてっ」舌を噛みそうになったので、僕は口を閉ざした。
直線が多いものの、曲がる時は90度ターンを殆ど減速せずに走っているのだ。
最初の内は、車の進行に合わせて信号が青に変わっていって、殆どノンストップだったが、
ミサトは性能の限界に挑む方に気を取られていて、赤信号や黄色の信号でも平気で突っ走っていた。
その頃 地下鉄の中では……
「確か青の方がパラライザーだったわよね」ミライは切り替えスイッチをセイフティからパラライズの青い所までスライドさせた。
「大丈夫?ミライお姉ちゃん……」
「大丈夫よ これでも昔はシンイチと山とかで鉄砲遊びしてたんだから」そう言いながらミライは銃口を女子トイレの入り口に向けた。
そう……二人は女子トイレの個室の中に入っていたのであった。
「とにかく、電車を降りたら、ホテルOccident405号室に向かうのよ 場所解る?もしかしたら離れ離れになるかも知れないし」
「ママが言うには第三新東京駅を出たら左にまっすぐ行けばすぐあるそうだから、まぁ一応覚えといてね」
「うん」ローラは少し不安そうに頷いた。
「大丈夫よ ローラちゃんをあんなヤツなんかに渡さないから……短い間だったけど……家族じゃない……」
「おねえちゃん……」ローラは堪えていたのか、目元に涙を溜めていた。
「大丈夫……大丈夫よ さぁ、もうすぐ駅に付くと思うから」
「ウン!」ローラは洋服の袖で涙を拭った。
ブレーキがかかり、車内が少し傾き初めていた。
「電車が止まったら一気に走るわよ いいわね」
「うん!」
”PRRRR 第三新東京駅ぃ 第三新東京駅に到着しました”
「今よっ」ミライは右手に銃を握ったまま、トイレのドアを蹴り開けて電車の出口を目指した。
ミライとローラは人込みにまぎれ込んで電車を駆けおりた。
「改札はあっちよ!」ミライはローラと一緒に改札口を目指した。
その時銃声が鳴り響いたかと思うと、ミライの少し前の天井の広告灯が割れて飛び散った。
「危ないっ」ミライは、破片で怪我しないようにローラを突き飛ばした。
ミライに広告灯のガラス片がキラキラ光りながら降り注いだ。
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第11話Dパート 終わり
第11話Eパート
に続く!
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